乗客だった佐賀市の山口由美子さん(60)は、顔や首に切り付けられ、重傷を負った。今も傷跡がほおから鼻の下に残る。しかしバスの中で牛刀を振りかざす少年に、同い年で不登校の娘の姿が重なった。「(社会に適応できない)彼の悔しさ、つらさが分かった」。
医療少年院に収容中の2005年、3回面会した。「本当に申し訳ありませんでした」。その言葉を心からの謝罪と感じ、うれしかった。2人きりの時、本音を話してくれたと思った。「なぜこんなことをしたのか考えてほしい」と投げ掛けた。
06年、元少年が退院して1カ月ほどたって手紙が届いた。「報告が遅くなってすいませんでした」。返事を書いたが、2通目は来ず、投げ掛けた問いの答えは聞けていない。「どんな思いで生きてるか。近況も知りたい」。再会を待っている。
母達子さん=当時(68)=を殺害された同市の塚本猪一郎さん(53)は事件後、家族を立て直すことだけを考えてきた。事件後、長女(24)は生活が荒れ、高校を中退。次女(20)も中学に行かなくなった。「家の中がむちゃくちゃになった。親がすさむと子もすさむ」。家で勉強を見て、食卓を一緒に囲んだ。娘と向き合う日々を重ね、次女は今春、専門学校を卒業。長女も6月にカナダの大学を卒業する。やっと一区切りついた、と思う。この10年、子供がいなかったら家族はばらばらになっていただろう、と振り返る。「昔も今も、心の中から事件のことを消そうと努力している。恨みを言っていたら、家族が崩壊してしまう」。
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